コラム

外国人観光客獲得のカギは旅マエのタイミングでの効果的な情報発信

日本政府観光局が2019年10月16日に発表した「訪日外客数(2019年9月推計値)」によると、9月の訪日外客数は前年同月比で約11万人増の227万3千人。特にラグビーワールドカップの出場国が含まれる欧米豪州からの訪日外客は前年同月比で7万7千人の増加となっています。2020年は東京オリンピックが開催されることから、これ以上の訪日外客数が予測でき、地方で観光業に携わる方にとっては引き続き大きなチャンスが待っています。そこで重要となるのが、多言語による観光情報発信です。今回は特に旅マエのタイミングでの情報提供の重要性という観点から、訪日外国人観光客獲得のポイントをご紹介します。
 

過去最高を更新し続ける外国人観光客数と消費金額

冒頭でも触れたように、前年同月比で約11万人も増加した外国人観光客数。ラグビーワールドカップの影響が大きかったことも確かではあります。しかし、今回のワールドカップには参加していない中国、台湾、タイ、シンガポール、マレーシア、インドネシア、フィリピン、ベトナム、インドといったアジア、そして、欧州のドイツ、スペインの計11カ国でも9月として過去最高を記録。特にラグビーがそれほど盛んとは言えないアジア各国で過去最高を記録していることから、ワールドカップの観戦目的以外で訪日している外国人観光客が着実に増加していることがうかがえます。

また、日韓関係の変化、韓中関係の改善による中国への渡航需要の回復、旅行先としてベトナムが人気になるなどの影響で、韓国から訪日する観光客は昨年同月比58.1%減と大幅に減少。中国に次いで多かった訪日韓国人観光客がこれだけ減少しているにもかかわらず、外国人観光客の数自体は全体として増加していることからも、日本を観光したいと考える外国人がこれまで以上に増加していると推測できます。

また、増加しているのは外国人観光客数だけではありません。観光庁が発表している「訪日外国人消費動向調査2019年7-9月期の全国調査結果(1次速報)」を見ると、訪日外国人旅行消費額は、前年同月比9.0%増の1兆2,000億円。特にタイ、ベトナム、ロシアでは前年同月比で30%以上も増加。そして、1-9月では過去最高の3兆6,189億円となっており、観光客数の増加に伴い、消費額も増加傾向にあります。

外国人観光客が地方にまで足を延ばさない理由

観光客数、消費金額ともに増加している状況ではあるものの、問題点がないわけではありません。特に大きな問題は、外国人観光客の日本での行き先が関東と近畿に集中している点です。

日本政府観光局が日本を出国する訪日外国人(※)を対象に行った聞き取り調査によると、都道府県別訪問率ランキング(2017年)は、1位 東京(46.2%)、2位 大阪府(38.7%)、3位 千葉県(36.0%)、4位 京都府(25.9%)という結果でした。そして5位に初めて関東、近畿以外の福岡県がランクインしていますが、訪問率は9.8%。4位の京都からも大きく引き離されています。この結果から、外国人観光客は増加の一途をたどっているものの、その恩恵にあずかっているのは、ごく一部の大都市圏だけということが分かります。

では、なぜ外国人観光客が訪問するのは関東、近畿の大都市圏だけで、地方にまで足を延ばさないのでしょうか? そのヒントとなるものが、2016年12月に日本政府観光局が発行した「訪日外国人旅行者の消費動向とニーズについて-調査結果のまとめと考察-」の中にあります。アジア、欧米の5市場(中国、タイ、インドネシア、米国、フランス)で消費者アンケートやインタビューを行った結果、主要観光都市以外への訪問を検討する際、その検討先から外れてしまう理由として、主に次のようなことが挙げられています。

・主要観光地以外の認知度の低さ
・訪日旅行日数の長さ
・地方旅行に対するアクセシビリティ面の懸念や抵抗感

一方、地方訪問の動機となり得る主な観光資源として、温泉や静けさ、歴史的建造物などが挙げられていて、アクティビティとしては「特産物の飲食」や「自然景勝地観光」のニーズが大きいとされています。このことから、認知度の低さが解消されれば、主要都市から距離が離れていてアクセシビリティ面に不安があっても、外国人観光客の訪問先候補になる可能性は高まると言えるのではないでしょうか。

※1年以上の滞在者、日本での居住者、日本に入国しないトランジット客、乗員を除く

地方での外国人観光客獲得成功事例

主要都市以外の地方都市が外国人観光客集客でもっとも苦労する「認知度の低さ」。しかし観光情報サイトやSNS、スマートフォンアプリを活用し、観光施設やイベントの情報を発信することで外国人観光客の誘致に成功している地方自治体も少なくありません。そのなかでも積極的な取り組みによって外国人観光客が増加している地方自治体の事例をご紹介します。

 

青森県 ~多言語での情報発信強化~

青森県で外国人観光客が増加した要因は、青森と中国・天津間の航空便の就航、台湾からのチャーター便の増加といったアクセシビリティ面の不安解消ですが、そのきっかけとなったのは、広報活動の強化です。

天津便の誘致に当たっては、観光地や伝統芸能の体験施設などを中国の旅行会社にPRし、県内の観光地の魅力をアピール。また、2014年に策定した観光戦略に基づき、青森県観光情報サイトや観光パンフレットの多言語化を行い、Facebookからも多言語で情報発信するなど、大々的なプロモーションを実施しています。結果的に2012年には約4万人泊だった外国人延べ宿泊者数が2017年にはその6倍を超える約26万人泊まで急増しました。

 

佐賀県 ~映画やドラマのロケ地として積極的に誘致~

佐賀県では、県内の土地をタイの映画やドラマのロケ地として利用してもらうために積極的に誘致を実施。さらに映画やドラマの公開に合わせたイベントを企画することで、ロケ地巡りを目的とするタイ人観光客の大幅増加を実現しています。また、佐賀空港に関係する航空会社への運航経費のサポートや旅行会社への補助など、訪問者数の増加につながる施策も実施しました。

県内の観光関連施設では、Wi-Fi環境の整備や観光アプリの制作を行い、24時間体制の14カ国語対応多言語コールセンターも設置。結果として、2012年から2017年の5年間で、外国人延べ宿泊者数が約4万人泊から約38万人泊と約9倍に大幅に増加しました。

これらの地方自治体が外国人観光客を獲得した大きな要因として、アクセシビリティ面の改善や積極的な誘致などが挙げられることは間違いないでしょう。しかし、それ以外にも大きな要因として挙げられるのが、Webサイトやアプリの多言語化によるアピールです。実際、青森県でも観光情報サイトを多言語化したことが、外国人観光客誘致につながっています。このような方法であれば、アクセシビリティの整備をするのに比べ、予算をかけずに海外へ向けてアピールすることが可能です。

Webサイトの多言語化によるアピールのメリットは、低予算であることに加え、短期間で実現可能という点です。オリンピック開催まで1年を切った今、できるだけ低予算で短期間に海外へ向けて地方都市のアピールをするには、まずWebサイトを多言語化することが最適であると言えるでしょう。

まとめ)地方の観光業を盛り上げるポイントは多言語化サイトによる積極的な情報発信

旅行日数、滞在費用、交通費など、外国人観光客が地方の観光地まで足を延ばさない理由は少なくありません。そのなかでも特に大きな理由となるのが認知度の低さです。実際、前項でご紹介した外国人観光客獲得に成功している地方自治体は、Webサイトやアプリなどを活用し、観光情報を積極的に発信することで認知を得ています。

2020年に開催される東京オリンピック・パラリンピックで多くの外国人観光客が訪日する前に、地方が実施すべきことはとにかく知名度を上げることです。そして、そのために効果的なのが多言語化サイトによる情報発信ですが、ポイントはできるだけ早く正確な多言語化を実現することです。

そこで、おすすめなのが人力翻訳と機械翻訳のハイブリッド翻訳でWebサイトの多言語化を実現するツール「shutto翻訳」。翻訳会社に依頼すればコストがかさみ、機械翻訳だけに頼ると正確性に疑問が残りますが、shutto翻訳を使い、人力翻訳と機械翻訳を同時に進めていくことで、コストを抑えつつ、迅速な多言語化サイトを制作することが可能になります。外国人観光客の獲得で地方の観光を盛り上げたいとお考えであれば、ぜひshutto翻訳を活用した多言語化サイトで積極的な情報発信をしてみてはいかがでしょう。

 

参考

訪日外客数(2019年9月推計値)|日本政府観光局
訪日外国人消費動向調査|観光庁
都道府県別訪問率ランキング|日本政府観光局
訪日外国人旅行者の消費動向とニーズについて|日本政府観光局
外国人観光客誘致における自治体の課題と取組事例【自治体事例の教科書】|自治体通信ONLINE

 

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