コラム
オリンピック後はどうなる?今後も訪日外国人観光客が増え続ける理由(前編)
オリンピックが終わったら、訪日外国人旅行者はどうなるの?
2018年は過去最高の3,000万人を突破し、2019年はさらに上回るペース。日本を訪れる外国人旅行者は過去5年間で3倍以上に急増しています(参照:前回記事)。2020年の東京オリンピック・パラリンピックを合言葉に、インバウンド対応の機運は、官民を挙げてますます高まっています。
では、オリンピックが終わったら、訪日外国人旅行者はどうなるのでしょうか? 日本への海外旅行ブームは過ぎ去って、減少したりするのでしょうか?
結論から言うと、オリンピック後も訪日外国人旅行者は増え続けると考えられます。というのは、今なぜ急増しているのか、その理由を考えると予想できるからです。
オリンピックは通過点!
今後も訪日外国人旅行者が増え続ける理由とは?
では、今なぜ訪日外国人旅行者が急増しているのでしょうか? なぜオリンピック後も増え続けると予想できるのでしょうか? それには次のような理由が考えられます。
1.アジア各国・地域の経済成長
2.円安基調の為替相場
3.LCCの就航路線・便数の拡大
4.ビザ要件の緩和・免除
5.日本への興味・関心の高さ
今回は外的な要因と言える1~2について考えてみましょう。
1.アジア各国・地域の経済成長
海外旅行は決して安価ではないため、ある程度の所得水準が必要です。かつての日本人の海外旅行ブームを振り返ってもわかるとおり、経済成長によって所得水準が向上すると海外旅行への需要が高まるようになります。
近年アジアの各国・地域は急速な経済成長で所得水準が向上し、海外旅行者も大幅に増加しています。その大きな流れの中で、日本を訪れる外国人旅行者も急増しているのです。
下のグラフは、訪日外国人旅行者の4分の3を占める中国・韓国・台湾・香港(参照:前回記事)の所得水準(一人当たりGDP/円建て)と訪日者数(人口比)の推移です。所得水準と訪日者数が相関関係にあることがわかります。
所得水準と訪日者数の関係(一部抜粋)
出典:日本総研「拡大が期待される訪日外国人の展望」(2018年2月20日)より一部抜粋
訪日者数が最も多いのは中国ですが、上のグラフによると、人口比ではまだ0.5%程度に過ぎません。韓国・台湾・香港が14~30%程度であるのに比べると非常に低い数値になっています。
今後も中国の経済成長が進んで、もし韓国と同じ14%になるとしたら、単純計算で現在の25倍以上の中国人旅行者が日本を訪れることになります。中国の人口が14億人超であることを考えると、その潜在力は計り知れません。
同じことは、急速な経済成長を遂げているASEAN諸国(10ヶ国合計で6億5千万人超)やインド(13億人超)にも言えるでしょう。
2.円安基調の為替相場
かつての日本人の海外旅行ブームが円高を背景にして盛り上がったように、旅行先の国の通貨に対して自国の通貨の価値が高くなると海外旅行がしやすくなります。近年では円安基調の為替相場が続いており、海外から見ると日本は旅行に行きやすい国になっているのです。
2011年にバブル期の超円高を上回る75円32銭(変動相場制移行後の最高値)を記録した円は、2014年以降は一転して120円程度の円安となりました。下のグラフのとおり、人民元は米ドルと同じような動きをしています(韓国ウォン・台湾元・香港ドルも同様)。中国人観光客による「爆買い」が話題になった2014年~2015年頃は、ちょうど円安が進んだ時期でした。
米ドル/円レート(上)と人民元/円レートの推移
出典:楽天証券 マーケット情報 テクニカルチャート
例えば、買い物の予算が1万元の場合、2011年(1元=12.35円)は12万円でしたが、2015年(1元=19.44円)では19万円となり、価値が60%も増加しました。逆に言うと、10万円分の買い物をする予算として、2011年は8,000元が必要でしたが、2014年では5,000元で済み、40%近くもお得ということになりました。
「爆買い」は中国政府による個人への関税の強化や、相場がやや円高の方へ戻った影響で沈静化したと言われています。また、最近では以前より円高傾向になっています。その一方で、日本銀行がインフレ率(物価上昇率)を考慮して発表する実質実効為替レートではまだ相当な円安と見なされており、当面はまだまだインバウンドを呼び込みそうです。
オリンピック後も訪日外国人旅行者が増加し続ける理由
インバウンドへの対応は業種問わず絶好のビジネスチャンス!
今回は、オリンピック後も訪日外国人観光客が増加し続ける理由として、外的な要因となる1~2について考えてみました。次回は受け入れる側の内的な要因となりそうな3~5について考えてみます。
1.アジア各国・地域の経済成長
2.円安基調の為替相場
3.LCCの就航路線・便数の拡
4.ビザ要件の緩和・免除
5.日本への興味・関心の高さ
政府は2020年には4,000万人、2030年には6,000万人の訪日外国人観光客を迎える目標を掲げており、それに向けて様々な施策が予定されています。インバウンド対応によるビジネスチャンスは、今後も観光や交通、宿泊はもちろん、小売、飲食、レジャー、不動産など、様々な業種に広がっていくことは間違いありません。この絶好のビジネスチャンスをつかみ、機会損失を防ぐためにも、インバウンド対応はあらゆる事業者にとって不可欠と言えるでしょう。
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