コラム
インバウンド対応でビジネスチャンスを逃さない!外国人観光客が困ったこと第1位は?
コロナ禍を経て、再び外国人観光客を街で多く見かけるようになりました。
日本に訪れる外国人観光客が困ったことには、どのようなものが挙げられるでしょうか。
この記事では、どのような場面で外国人が戸惑いを感じたのかを一覧で紹介します。
観光庁の調査では困ったことは年々減っている
出典:観光庁「訪日外国人旅行者の「困った」が減少!一方、地方部の受入環境には課題も~受入環境整備の促進に向けて、訪日外国人旅行者を対象に、訪問地ごとの状況についてアンケート調査を実施~」
観光庁は、令和元年9月から12月にかけて外国人観光客への調査を行いました。
調査で「困ったことはなかった」と答えた人は、過去最高の38.6%でした。
また、継続調査をしてきた困りごとの各項目についても割合が減っており、徐々に悩みが解決されていることがわかるでしょう。
これらの結果から、「困った」ことが減ってきているといえます。
一方、同時に調査された「便利」と感じた項目には、都市部と地方で一部如実に差が出ました。
特に「公共交通機関の利用」や、「無線LANの利用」については大きな差が見られ、改善の余地があります。
日本に来て困ったことの第1位は「ゴミ箱の少なさ」
最も回答数が多かったのは「困ったことはなかった」ですが、外国人観光客が日本で困ったことの中での第1位には「ゴミ箱の少なさ」が選ばれました。23.4%の外国人観光客がこの項目を選んでいます。
2位になった「スタッフとコミュニケーションが取れない」が17.0%であるため、ダントツで「ゴミ箱の少なさ」が選ばれているといえるでしょう。
日本の観光名物には、食べ歩きも含まれます。しかし、食べた後のゴミを捨てられず、観光客が困っているという実情もあります。そもそもなぜ日本のゴミ箱は少ないのでしょうか。
日本は実際にゴミ箱が少ない
日本は諸外国に比べ、ゴミ箱が少ない国です。
ヨーロッパやアメリカでは街角に大きなゴミ箱が設置されていることが多い傾向にあります。それらの国と比べると、確かに日本のゴミ箱は少なく、アンケートにもその結果が反映されたといえるでしょう。
テロ対策の意味合いでもともと数が少なかったゴミ箱は、新型コロナウイルスの拡大に伴って、さらにその数が減少したと考えられています。推測される理由として、割り箸や使い捨てマスク、使用済みティッシュなどが感染拡大の原因になりかねないと判断されたためです。
首都圏の主要な鉄道11事業者のうち、ゴミ箱が残るのはJR東日本のみとなっています。
JR東日本がゴミ箱を残しているのは、東京駅などの巨大ターミナルを抱え、長距離利用客が多い同社は、駅で弁当や土産物など様々なものを販売しているためのようです。
在来線を中心に一部撤去されたゴミ箱もありますが、駅弁などのゴミが出る新幹線や特急の停車駅のホームではゴミ箱が残されており、JR東日本首都圏本部は「駅構内で多くの店舗が営業しており、全撤去の予定はない」としています。
また、日本ではゴミを持ち帰る文化があることもゴミ箱の設置が少ない理由の一つと考えられます。
コミュニケーションの問題は第2位に
令和元年度の調査で2位になったのは、スタッフとコミュニケーションが取れないことでした。アンケート結果では、「英語を話す人が全般的に少ない」「中国語が話せるスタッフを増やしてほしい」という意見が見られました。
令和4年度の宿泊者数データでは、三大都市圏(東京都・神奈川県・千葉県・埼玉県・愛知県・大阪府・京都府・兵庫県)以外を訪れる外国人は、全体の26.3%にのぼり、その数は441万人程度です。
日本の魅力が都市部だけでなく地方にもあると雑誌で特集され、外国人観光客が急増した市もあります。
コロナ前の観光客数に回復すれば、より多くの外国人観光客が地方を訪れると考えられるため、コミュニケーションに壁を感じさせない工夫が求められます。
多くの場所で多言語表示が追い付いていない
出典:観光庁「令和元年度「訪日外国人旅行者の受入環境整備に 関するアンケート」調査結果」
令和元年度の調査で17%の観光客がコミュニケーションの問題について困ったと回答しました。そして、困ったことの4位には「多言語表示の少なさ・分かりにくさ」が11%でランクインしています。
これらを単純に合計すると、コミュニケーションに困る外国人観光客の割合が、ゴミ箱の少なさに困る人の割合を上回るほどだといえるでしょう。
多言語表示においては、都市部と地方で、それぞれ異なる改善が求められます。
都市部では交通網の改善が必要
都市部では、回答者の約4割が鉄道駅構内で「困った」と感じています。
これは都市部の駅利用者数が多く、複数の路線の駅が1箇所に集約されていることが関係しているでしょう。
中でも、新宿駅は世界で最も利用者数の多い駅としてギネス記録に認定されているほど人の往来が多い駅です。
人が多いだけでなく、構内の導線も複雑な駅は日本人でも迷ってしまうほどです。
案内板の多言語化も必要ですが、同時に駅構内の導線の整備や、分かりやすい多言語対応のマップの作成などが求められます。
どのルートを通れば乗り換え先に辿り着けるのか、サイト上に動画やマップとして掲載することも助けになる可能性があります。
地方では観光地の改善が必要
地方での「困った」場所を見ると、飲食店や、神社・仏閣・城郭の他に、小売店関連をはじめ、観光案内所や国立公園、美術館・博物館が都市部と比べ割合が高くなっています。
この結果を見れば、観光地では、より改善が求められていることが分かるでしょう。
案内板の多言語化や、音声ガイダンスの充実化などに取り組むことで改善できる可能性があります。
その他の外国人の困りごと
言語の壁やゴミ箱の少なさだけでなく、「フリーWi-Fiの接続」や「キャッシュレス決済」について外国人は困ったと感じたことが調査で分かりました。
コロナでキャッシュレス決済への対応は進められています。「キャッシュレス決済を頻繁に利用している」と回答した人は令和元年12月は54.2%だったのに対し、令和4年2月には64%となり、増加傾向です。
一方フリーWi-Fiは、東京五輪に向け順調にスポット数を増やして対応してきましたが、コロナ禍で人の往来が減ったため、提供されなくなったところもあり総数が減少しています。
外国人観光客がコロナ前の水準に戻れば、不便さを訴える人が増えることも考えられ、利便性向上のための策を用意する必要があるでしょう。
「コミュニケーション」は外国人観光客が日本で困ったこととして例年上位に
平成28年度~30年度に行われた調査では、コミュニケーションに関する項目が「困ったこと」の第1位でした。毎年割合は減少傾向にありますが、令和元年の調査でも第2位の17%であり、「言葉の壁」を感じる外国人は依然多くいます。
1.施設スタッフとのコミュニケーション 20.6%
2.無料の公衆無線LAN環境 18.7%
3.公共交通機関の利用 16.6%
4.多言語表示の少なさやわかりにくさ 16.4%
5.クレジットカードやデビットカードの利用 10.0%
外国人観光客が日本で「コミュニケーション」「多言語表示」に困る場面
では、外国人旅行者は、具体的にどのような場面で困っているのでしょうか? 観光庁の別の調査によると、「コミュニケ-ション」や「多言語表示」で困った場所は、飲食店が最も多く28.5%、鉄道駅が17.4%、小売店が16.2%という順になっています。
さらに、各施設で特に困った場面としては、飲食店では「料理を選ぶ・注文する際」(65.8%) 、鉄道駅では「今いる駅から目的地までの行き方を特定する際」(62.4%) 、城郭・神社・仏閣では「歴史・文化に関する説明を読む際」(68.4%)という回答が多くなっています。
1.飲食店 28.5%└ 1.料理を選ぶ・注文する際 62.4%
└ 2.飲食店を見つける際 32.9%
└ 3.食べ方の説明を受ける際 32.2%
2.鉄道駅 17.4%
└ 1.今いる駅から目的地までの行き方を特定する際 62.4%
└ 2.改札内で乗車ホームを見つける際 42.1%
└ 3.駅で切符を購入する際 40.1%
3.小売店 16.2%
└ 1.商品の内容や使い方を確認する際 49.6%
└ 2.商品を探す際 48.5%
4.城郭・神社・仏閣 9.8%
└ 1.歴史・文化に関する説明を読む際 68.4%
└ 2.参拝方法の説明を読む際 48.2%
└ 3.見学時の注意事項の説明を読む際 32.0%
5.宿泊施設 5.4%
└ 1.チェックインの際 33.5%
└ 2.日本独特のもの(大浴場等)の使用方法を尋ねる際 32.4%
└ 3.周辺の観光情報を尋ねる際 29.5%
└ 4.部屋の使用方法の説明を受ける際 22.5%
多言語表示・コミュニケーションで困った場面(抜粋)
出典・参考:国土交通省 観光庁(2018年3月発表)
「訪日外国人旅行者の受入環境整備における国内の多言語対応に関するアンケート」結果より
ほか、近年では自然災害時の注意喚起や避難情報、交通機関等のトラブル時のアナウンスなどが外国人向けには十分ではなく、不安や混乱を招きがちなことがメディアなどでも取り上げられるようになっています。
「コミュニケーション」「多言語表示」を改善し、
外国人観光客と円滑にコミュニケーションを取るための対策は?
「コミュニケーション」「多言語表示」が不十分な理由としては、語学スキルや案内表示の設置数、記載された言語数、情報量の不足などが挙げられています。では、どのような対策を取ればよいのでしょうか? 改善するには次のような施策が考えられます。
●多言語表示の充実
・多言語による案内表示やパンフレット、アナウンス、音声ガイド、指差し会話シートなどを充実させる。
→ 前述の観光庁の調査でも、外国人旅行者の多くが回答しています。
●人材の育成・配置
・スタッフへの英語教育に取り組む。
・外国人を採用する。
→ いずれも時間とコストが必要となり、離職等のリスクもあります。
●スマートスピーカーや翻訳デバイスの利用
・スマートスピーカーなどのAIアシスタントや翻訳デバイスを利用する。
●翻訳アプリの利用
・スマホやタブレットで翻訳アプリやAIアシスタントを利用する。
→ 外国人旅行者の半数も、コミュニケーションに困ったときの解決方法として利用しています。
●無料公衆無線LAN/WiFi環境の整備
・無線LAN/WiFi環境を整備し、無料で利用できるようにする。
→ 外国人旅行者や日本人スタッフが、スマホやタブレットで翻訳アプリを利用したり、インターネットを検索したりしやすい環境を整えることができます。
●Webサイトの翻訳・多言語化
・Webサイトに情報を集約・整理し、翻訳・多言語化して提供する。
→ 外国人旅行者が情報収集したり、日本人スタッフが外国人旅行者に応対したりするのに役立ちます。
→ 外国人旅行者が旅行前に訪問先を選定する段階から情報提供でき、旅行中の現地での調べ物や確認、旅行中や帰国後のSNSでの拡散にも利用されやすくなります。
→ Webサイトに情報を集約して翻訳・多言語化しておくことにより、チラシ、パンフレット、ガイドブック、飲食店のメニュー、小売店の商品説明など、Web以外の多言語表示のマスターとして転用することができます。
外国人観光客が困っている「言葉の壁」を
翻訳・多言語化で解消して、集客と売上アップにつなげる
「コミュニケーション」「多言語表示」を改善し、外国人観光客と円滑にコミュニケーションを取るための施策をいくつか紹介しました。いずれの施策も、外国人観光客が実際に現地に訪れたときに、その場で効果を発揮してくれるものです。中でも取り組みやすいものとしては、翻訳アプリの利用やWebサイトの翻訳・多言語化などから始めてみてはいかがでしょうか?
とくに、Webサイトの翻訳・多言語化なら、訪日前の情報収集の段階から、訪日中の確認や調べ物、帰国後のSNS拡散まで、外国人旅行者の行動に幅広く対応することができます。Webサイトに情報を集約しておけば、多言語表示のマスターとして利用することも可能です。
インバウンドを自らのビジネスチャンスとして活かすには、「言葉の壁」で困っている外国人旅行者を翻訳・多言語化によって集客し、お客様として取り込んでいくことが重要になってきます。この絶好のビジネスチャンスをつかみ、機会損失を防ぐためにも、インバウンド対応はあらゆる事業者にとって不可欠だと言えるでしょう。
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