2018年、日本国内における外国人旅行者数が初めて3,000万人を突破しました。旅行消費額も4兆5千億円を超え、右肩上がりで増加を続ける日本のインバウンド市場。2019年にはラグビーワールドカップ、2020年には東京オリンピック・パラリンピックと大きなイベントが待っていることから、この傾向は今後も続くと予測できます。一方で、日本のインバウンド市場をさらに拡大させていくには、いくつかの課題もあります。日本のインバウンド市場の現状と対応方法について考察します。
インバウンドとは、「本国行きの」という意味の英単語で、日本人の間や日本の企業で使われる場合には「海外から日本に来るものやひと」を意味します。観光業界においては「外国人が日本に訪れる旅行」のことをさします。
近年、インバウンドという言葉がよく登場することになった理由のひとつに、訪日外国人観光客の増加と市場規模の拡大が挙げられます。観光庁が発表している訪日外国人観光客統計を見ると、2018年には3,119万人、旅行消費額も4兆5,189億円、これはどちらも過去最高の数字です。2019年もすでに昨年をさらに上回るペースで推移し、今後も拡大が見込まれます。
昨今の訪日外国人観光客の急激な増加にともない、いくつかの問題点も顕在化しています。そのなかでも大きな問題なのが観光地や公共交通機関といったリアルの場に加え、Webで多言語対応されているサイトが少なく、急増する訪日外国人観光客の需要に対応できていない点です。
観光庁が毎年実施している「訪日外国人旅行者の受入環境整備に関するアンケート(平成30年度調査)」によると、リアルな場での旅行中の困りごととして、16.4%が観光案内板や地図などの多言語表示の少なさ、分かりにくさを挙げています。また「施設等のスタッフとのコミュニケーションがとれない」は20.6%と最も高い数字となっていることからも、言語の壁によるコミュニケーションに対する不満が多いことがうかがえます。
また、困りごとの16.6%が公共交通の利用の「多言語対応したルート検索、切符予約用のWebやアプリがない」といったものが挙げられ、Webサイトの情報収集が多言語化されていないために困難となっていることもうかがえます。
旅行で最も重要といえる移動においても、情報収集の手段となるWebサイト上で多言語化が進んでいないことは、快適な旅行の大きな妨げとなる問題であり、早急な対応が必要といえます。
このような問題に対して、まず最低限やらなければならないことは公共交通機関や観光地、そしてWebサイトの多言語化などのインバウンド対応です。
観光庁は、政府の行動計画「観光ビジョン実現プログラム2019」の中で、訪日外国人観光客数を2020年に4,000万人、2030年に6,000 万人を目標設定しています。この目標を達成するための第一歩としても、多言語化は必須といえるでしょう。
では、リアルな場面での対応とWebでの対応、どのような順番で進めていけば良いでしょうか。
まずリアルな場面での対応において、訪日外国人観光客が快適に日本での旅行を楽しむためには、多言語に対応できるスタッフの雇用・育成、クレジットカードやデビットカード、そしてモバイルペイメントといった決済手段の多様化、いつでもどこでも気軽にネット接続を可能にする無料公衆無線LAN環境の整備など が重要なポイントです。
これらのインフラの整備や人材の育成は訪日外国人観光客が観光地に実際に訪れた際に効果を発揮する施策であるのに対し、Webサイトやアプリの多言語化は観光地に訪問する前、つまりは、旅行先の選定の段階からも、有効な施策です。したがって、Webサイトやアプリの多言語化は、ほかの施策に先んじて実施すると良いといえます。さらに、Webサイトやアプリを多言語化することで、例えば、Web以外のリアルな場面でも活用しているチラシや資料、飲食店や小売店での多言語化メニューなどと、転用も可能となり効率的であるともいえそうです。
いよいよ開催が迫ってきている、2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて、訪日外国人観光客向けのインバウンド対応は、特に観光地において迅速に行うことが求められます。しかし、そのための予算を割くのが難しいというケースも少なくないでしょう。そこで観光庁では「明日の日本を支える観光ビジョン」において補助金の交付を行っています。
補助金の対象となる事業は
・「宿泊施設インバウンド対応支援事業」
・「交通サービスインバウンド対応支援事業」
・「地方での消費拡大に向けたインバウンド対応支援事業」
の3つです。訪日外国人観光客の受け入れ環境整備を行うための緊急対策促進を目的に交付しています。
具体的には、以下のようなことを行う際に補助金を利用できます。
・観光地での多言語観光案内標識の設置や改修
・外国人観光案内所の整備や改良
・配布する資料や地図などの多言語コンテンツ作成
・飲食店、小売店などの多言語対応
・クレジットカードやモバイルペイメントでの決済環境の整備
・公衆トイレでの洋式便器の整備
・無料公衆無線LAN環境の面的整備
などです。募集時期、内容は随時更新されるため詳しくは観光庁、もしくは各自治体のWebサイトで確認してみましょう。
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述べてきたとおり、ますます増加する訪日外国人観光客、障壁となるのは言語の壁です。訪日前段階からの情報収集にも有効なWebの多言語化し、活用することにより、インバウンド対応の効果・対応の幅が広がります。Webサイト翻訳・多言語化対応ツール「shutto翻訳」なら最短3分で多言語化が可能。自動翻訳・プロ翻訳・セルフ編集機能を組み合わせれば、さらに高品質にインバウンド対応できます。ただいま無料トライアルで30日間お試しOK!詳しくはこちらをご覧ください。
2018年1月~12月 国・地域別 / 目的別 訪日外客数 (暫定値)|JNTO(PDF)
訪日外国人旅行者の受け入れ環境整備に関するアンケート(平成30年度調査)|観光庁(PDF)
観光ビジョン実現プログラム2019|観光庁
訪日外国人旅行者の受入環境整備|観光庁
インバウンド対応の第一歩は「言葉の壁」を取り除くこと!
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