新型コロナウイルス感染症の5類分類以降、入国規制が撤廃され、インバウンド需要は2019年以前の水準を上回る勢いで拡大しています。
しかし、受け入れ側としての海外の言語や風俗習慣などへの対応は完璧とはいえず、近年増えている外国人富裕層へ向けた高級ホテルや高額プランのようなサービスについても整備されているとはいえません。
このほか、外国人観光客が情報収集をしたり、宿を予約したりするためのUI/UXの向上や多言語対応も必要となります。
本記事では、サービスの価値向上やDX化などのインバウンド対策について、方法とポイントを解説します。
インバウンド(Inbound)とは本来「中に入ってくる」「物や情報が中心に向かって移動する」という意味を持っています。
観光業界と関連する小売業などにおける「インバウンド需要」は、訪日外国人による消費行動によって生じる「商品・サービスへの需要」を指す言葉です。これには、観光だけでなくビジネストリップや留学での消費も含まれます。
国内産業の低迷を背景にインバウンド需要への期待が持たれていますが、現状は人材や受け入れ体制についての課題が多いという状況です。
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インバウンド需要は、2020年から3年間程度のコロナ禍によって大きく落ち込んでいましたが、2022年後半から回復基調に転じています。
具体的には、2023年12月の訪日外国人数は、コロナ禍前の2019年12月を上回る2,734,000人にまで回復しています。
訪日外国人数の内訳は、多い順に韓国・台湾・中国・香港・アメリカ・タイと続きます。
その中で、訪日韓国人数は2倍以上に増えているものの、中国とタイは2019年のコロナ禍以前の訪日数と比較すると減少傾向で、とくに中国は大幅に減少しています。
インバウンド需要が増加することによるメリットは、国内経済への波及効果です。
経済産業省の試算によると、コロナ禍が生じる前、2019年の訪日外国人旅行消費額約4.8兆円に対して、「生産誘発額(消費額含)(一次)」は7兆7,756億円でした。つまり、消費額の1.75倍です。これは、訪日外国人の旅行消費が国内に波及したことで、プラスで75%の新たな生産を生じさせる効果があったことを示しています。
そして、2023年のインバウンド消費額は5兆2923億円。一人あたりの消費額は21万円以上と、消費額はコロナ禍以前を上回り過去最高を更新。2023年の(名目及び実質)GDPを1.07%押し上げる計算となります。
旅行業界だけではなく、日本旅行をきっかけにECサイトで日本の商品を購入するなどの広がりも見られます。さまざまな地方の観光地に外国人観光客が幅広く分散するようになれば、地域の活性化にもつながるでしょう。
反面、デメリットとしては、外国人観光客のマナー違反や文化の違いによるトラブルが増加することが考えられます。そのほか、公共交通機関の混雑などにより地元生活者に不便が発生したり、外国人観光客の利用が増えることで、日本国内の旅行客が予約を取りづらくなることや、外国人旅行客に合わせたサービスを提供する準備に手間がかかることもデメリットといえるでしょう。
ここからは、インバウンド需要を取り込むためのさまざまな施策について解説します。
宿泊や観光のための施設そのものや、周辺の設備を充実させるなど、訪日外国人観光客を受け入れる体制は整いつつあります。
今後は、顧客体験を向上させたり、サービスの質を改善したりするなど、ソフト面を充実させ、客単価を上げる施策が必要でしょう。
このほか、Webサイトでもインバウンド対策を行うことが重要です。多言語に対応した情報を外国人観光客向けに発信すれば、集客に役立てられます。
まずは日本を訪れる外国人観光客のニーズを探ることから始めましょう。
日本人にとっては当たり前のことでも、外国人観光客にとっては価値のある魅力と捉えられることもあります。
インバウンド需要を取り込むためには、まずは外国人観光客の目線でどんなニーズがあるかを知ることが大切です。
ニーズを探るマーケティング調査の一例としては以下が挙げられます。
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Webコンテンツはブラウザがあれば閲覧可能で、アプリなどに比べて設置が容易、情報更新が迅速で柔軟性が高い、汎用的な拡張機能が多く存在するなどの利点があります。
さまざまな国から来日する外国人に向けた情報提供手段としての役割は大きいといえるでしょう。
Webサイトを多言語対応することは、より多くの国や地域の人々が情報を得る助けとなるため、外国人観光客の利用増加を促す1つの施策となるでしょう。
ユーザーがブラウザ翻訳を利用することでも翻訳は可能です。しかし、人名やサービス名などの固有名詞や、キャッチコピーのような表現については、発信したい内容が適切に翻訳されない可能性があります。ブラウザ翻訳に任せるだけではなく、必要な箇所はWebサイト側が事前に翻訳しておくことでさらに伝わりやすいコンテンツになり、ユーザー体験を向上できる可能性があります。
このため、ブラウザ翻訳に任せるのではなく、必要な箇所はWebサイト側が事前に翻訳しておくことでさらに伝わりやすいコンテンツになり、ユーザー体験の向上に繋がるでしょう。
ユーザーインターフェース(UI)やユーザー体験(UX)を向上させることは、インバウンド利用の促進にも効果的です。
説明を読まなくても直感的に操作できる分かりやすいUIは、多くの人にとって使いやすいものだといえます。そのようにすることで、ユーザーが目的の情報を手に入れやすくなるでしょう。
店舗・施設では接客を通じた接触型コミュニケーションがあるため、言葉や文化の違いを越えるインバウンド対策が必要です。よりよい顧客体験を作るために工夫できる点は多いといえます。
ここでは、店舗や施設のインバウンド対策について紹介します。
店舗の看板・ディスプレイ・POP・メニュー・案内表示など、言葉が書かれているものは、主要な顧客層に合わせた多言語表示に対応させることが重要です。
ピクトグラムなど国際標準のあるビジュアルをは活用しつつ、多言語での説明を簡潔に行いましょう。
店舗・施設に外国語が話せるスタッフを配置してサービスの向上を図ることも1つの施策として有効です。
ただし、各国の顧客に十分に対応するには人数の確保も重要で、基本的な外国語対応をスタッフ全員が覚えるなどの中長期的な教育も必要になります。
訪日外国人観光客のなかには、一回の訪日で100万円以上の消費をする富裕層も多く含まれており、そうした富裕層を取り込むためには、「特別感」「本質的な価値の提供」「パーソナライズされた対応」などが必要です。
画一的ではなく個人に合わせたコンテンツの柔軟性や、他にはないその地域特有の気候や文化を活かした内容が、特別感を感じさせ満足度を高めるでしょう。
このような、富裕層のハイレベルなニーズにも、満足に対応できる体験型コンテンツの充実が急務です。
ホテルや施設においても、富裕層が満足できるホスピタリティのあるサービスの提供が求められています。
さまざまな国の風俗習慣や個人の信教に配慮したサービスの提供が課題です。
食事については、観光地の地元の食材は魅力的ですが、ゲストによっては制限があるため注意が必要です。
以下は、一般的な例のため、各個人で制限は少しずつ異なる可能性もあります。食べられないものや避けたいものなどの質問は事前にしておくことが望ましいといえるでしょう。
食事だけでなく、イスラム教徒(ムスリム)の方々は、毎日5回決められた時間に、メッカの方向(キブラ)に礼拝をする習慣があるため、礼拝環境の整備なども、施設に必要なインバウンド対策の1つです。
通信環境や決済などのインフラ整備は、外国人観光客に限らず国内の旅行者にとっても必要だといえるでしょう。
特に観光地で取り入れたいものは、以下の通りです。
域全体の利益を上げるためには、複数の地域を回遊してもらうことが重要です。地域によってはアニメツーリズムや、デジタルスタンプラリーも活用されています。
アニメツーリズムとは、アニメや漫画の作品の舞台となった土地や建物などを訪れる旅行のことで、「聖地巡礼」とも呼ばれています。日本のアニメや漫画はクールジャパン・コンテンツとして海外でも人気が高く、それに登場する場所を巡りたいというニーズが高まっています。例えばアニメ映画「君の名は。」で舞台となった岐阜県飛騨市では、映画で登場する飛騨市図書館で撮影の許可を取る準備や撮影時の注意事項を事前に準備し、聖地巡礼者の受け入れ対応を行い、注目を集めました。
デジタルスタンプラリーとは、ゲストがスマートフォンやタブレットなどのモバイル端末を持って観光地のスポットを訪れ、そこに設置されたQRコードのスキャンやGPSによる位置情報の取得等によって、Web上の特設サイトやアプリにアクセスし、スタンプを入手する仕組みです。北海道ではアニメ「ゴールデンカムイ」とのコラボスタンプラリーが行われ、2022年には北海道にまたがる47施設が対象となる大規模での開催となり、好評を博しました。
また、上記のような日本国内における対策だけでなく、海外の旅行サイトや海外向けサイト、海外でのアピールイベントにおける訪日観光の紹介を実施することも重要なインバウンド対策です。
インバウンド対策を進めるための方法にはさまざまなものがありますが、過剰に特別扱いをすることで、本来のおもてなしや日本のサービスが損なわれないようにできることから対応していきましょう。
ここでは、インバウンド対策をするときのポイントについて解説します。
長期的なインバウンド需要を満たすためには、外国人観光客に日本の観光のファンになってもらうことが重要です。しかし、外国人観光客がどのようなニーズを持っているのかが分からないということもあるでしょう。
そのために重要なものが、マーケットの調査です。日本人の視点ではさほど魅力的に映らないものでも、外国人観光客からすると、高い魅力を持っている可能性もあります。それらを見つけ出し、地域の価値として売り出すことが重要です。
外国人観光客に日本のファンになってもらうためには、「外国人観光客を受け入れている」という姿勢を示すことが重要なブランディングとなります。外国人観光客の視点に立ち、魅力に感じる見せ方ができるように工夫をしていきましょう。
どのような施策を取るにせよ、ユーザー体験を向上させることは最も重要だといえるでしょう。WebサイトやアプリのUI、店舗・施設での案内や接客品質を向上させることで、サービスに対するユーザー体験を向上できます。
Webサイトや現地施設の多言語対応は、観光客が快適に過ごすために重要です。サービスを拡充するときは、人によるおもてなしだけでなく、受付システムやアプリケーションのような機械的な部分に頼ることも重要です。人の手だけにこだわるのではなく、観光客を楽しませ、快適に過ごしてもらうということを第一に考えましょう。
インバウンド需要の拡大に伴って、受入側は対策をより充実させる必要があります。
なかでも、Webサイトの多言語化は、簡単に導入できるインバウンド対策です。
shutto翻訳は最短3分でWebサイトを多言語化できます。世界100言語以上に対応し、さまざまな形態のサイトを多言語化できるうえ、直感的な編集が可能です。インバウンド対策にぜひお役立てください。
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