グローバルにビジネスを展開する企業が増える中、多言語サイトの重要性が高まっています。
本記事では多言語サイトの役割をお伝えするとともに、制作にあたって押さえておきたいポイントを解説します。
多言語サイトとは、複数の言語に対応して公開されているWebサイトです。特定の言語と同じ内容を翻訳展開したものだけでなく、相手の国の文化に合わせて内容やページ構成が異なる場合もあります。
多言語サイトを持つことで、特定の国や地域にとどまらず情報を発信することが可能になります。
国境を越えて情報が行き来する現在、企業のビジョンや商品、サービス内容を広く世界へ向けて提供するために、多言語に対応したWebサイトを持つ必要性が高まっています。
近年、より多言語対応の需要が高まっている理由をいくつかご紹介します。
内閣府の報告書によると、日本の総人口は2022年の報告書時点で、1億2,495万人ですが、65歳以上人口は29.0%を占めています。
また、出生数も減少を続けていることから、日本の総人口は、長期の人口減少過程に入っているとされます。2031年に人口1億2,000万人を下回った後も減少を続け、2056年には1億人を下回るとの推計です。
このため、様々な業界がグローバルな市場開拓や国外からの人材獲得を迫られています。
2023年の年間訪日旅行者数は2,500万人を突破しコロナ禍から順調に回復を遂げ、消費額は5兆2,923億円で過去最高を記録しました。2024年の訪日客数はコロナ禍以前の2019年を上回るとも予測されています。
国が掲げる2030年の訪日旅行者数の目標は6,000万人、消費額は15兆円とされているため、今後も増加が見込まれます。各国からの旅行客を受け入れるために、旅マエ・旅ナカ・旅アトにおける情報発信が必要不可欠です。
経済産業省の調査によると、2022年の中国消費者による日本事業者からの越境EC購入額は2兆2,569億円(前年比5.6%増)、米国事業者からの越境EC購入額は2兆7,499億円(前年比6.7%増)と増加傾向にあり、世界の越境EC市場規模からすると、更なる成長が見込まれます。
さらに、昨今では、越境ECに対応したECカートサービスや、海外からの購入対応を支援する代理購入サービスが出現し、事業規模を問わず越境ECに取り組めるようになってきています。越境ECで成功を収めるには、ユーザーが商品を理解し比較検討ができるよう、多言語に対応したサイト作りが重要です。
日本の在留外国人数は2023年末時点で341万人(前年末比33万5,779人、10.9%増)を超え、過去最多を更新しました。公的機関の情報提供のみならず、民間の国内向けのサービスでも多言語の整備が求められています。
Webサイトを多言語対応するメリットはさまざまです。ここでは3つの観点からご紹介します。
日本の人口減少予測に伴う国内市場の縮小を見越して、多くの企業が海外市場へと目を向けています。
グローバル市場を開拓するためには、海外への情報発信は欠かせません。
多言語サイトを公開し、情報を国外に向けて訴求することによって、認知拡大や見込み客増加につながります。国内向けに情報を発信していたときには存在に気づけなかった、新たなニーズを見出せる可能性もあります。
他国のECサイトを利用するユーザーも増加しているため、ECサイトの多言語対応を行えば海外からの売上を伸ばすことにも繋がります。海外への商品発送などにはハードルがありますが、それらを支援するサービスも増え、ユーザー自身が代理購入サービスを利用するといった手段もあるため、事業規模を問わずに海外ユーザーを視野に商品を提供できます。
また、昨今ではインターネットを通じてサービスを提供するSaaSプロダクト、メディアサイトも増えています。サービス画面やWebコンテンツを多言語対応することで対象ユーザーを増やすこともできるでしょう。
訪日外国人の集客や、日本語ができない旅行者のおもてなし、帰国後のリピート購入やファン化という点でもWebサイトの多言語対応は役立ちます。
昨今の旅行者はSNSやアプリ、検索エンジンなど、インターネットを通じて旅先の情報を収集していますし、旅行中も随時スマートフォンなどで情報を確認して行動しています。
たとえ最初に知るきっかけが口コミやSNS、通りすがりだったとしても、公式のホームページをチェックして詳細を確認することも多いでしょう。その際に必要な情報が得られなければ、実際の訪問に不安を抱えたり断念する可能性もあるため、Webサイトの多言語対応は、集客を後押しする助けになります。
また、Webサイトで事前に情報を確認してもらうことで、現地での接客対応の負荷を減らすことにも繋がります。
さらに、訪日外国人は、ECサイトなどで事前に知ったブランドの店舗を訪問したり、旅の途中や帰国後にもECサイトを利用して商品購入をしたいという意欲があると言われています。
訪日外国人が増えている現在、ECサイトの多言語対応は海外からの売上を増やすチャンスに繋がります。
国内の労働人口の減少やグローバル人材の必要性の高まりなどから、広く世界に人材を求めることも増え、外国人労働者数や日本の在留外国人数は毎年過去最高数を記録しています。こうした在留外国人に向けた多言語対応も重要です。
公的機関や施設、サービスのWebサイトを多言語対応することで、在留外国人の暮らしやすさを高めることができ、企業ページの多言語対応は、広く世界から人材を確保する足掛かりとなります。
さらに、企業内での社内コミュニケーションにおいても、企業サイトや社内ポータルサイトの多言語対応によって、外国籍の社員との情報格差や働く際の不安や不便を減らすことができます。
昨今では、Webサイトを閲覧する際に利用するブラウザの翻訳機能が充実してきています。そのため、ユーザー自身で自動翻訳しながら母国語以外のサイトを閲覧しやすくなりました。では、多言語サイトを作成する必要はあるのでしょうか?
Webサイトを多言語対応するメリットとしては、以下の3つの点があげられます。
自国の言語が用意されていないページを見た際に、ユーザーは自分に向けられたページではないと感じてしまうこともあるでしょう。
多言語が用意されていないことでページから離脱してしまうこともありますので、多言語での閲覧を想定している姿勢を示すことは重要です。
検索エンジンは、検索者に合ったページを検索結果に表示します。そのため、日本語以外のキーワードで検索された場合、よほどユニークなキーワード以外では日本語のページが表示されることはありません。
ユーザー自身が翻訳しやすくなったとはいえ、日本語のページしかなければ、Webサイトを見つけて辿り着いてもらうこと自体が難しいでしょう。
ブラウザに用意されている翻訳機能は基本的に機械翻訳を利用しています。そのため、商品名や会社名といった固有名詞はうまく翻訳されない場合も多いでしょう。さらに、日本語は英語と比較すると主語が少ないことや体言止め表現などもあり、機械翻訳では伝わりづらい場合もあります。
その点、多言語のコンテンツをWebサイト自体で保有していれば、少しずつでも翻訳精度やコンテンツを調整して改善していくことができます。
Webサイトというと、Webサイト制作会社に依頼をして一から構築する方法や、CMS(コンテンツ・マネジメント・システム)を利用する方法などがありますが、そのようなWebサイトを多言語で展開する方法にはどのようなものがあるでしょうか。
多言語サイトの制作や、既存Webサイトを多言語に対応させる方法はいくつかありますので、ここでは、手段別にメリットやデメリットをご紹介します。
コンテンツそのものを日本語と他言語で併記する方法です。
<メリット>
<デメリット>
あくまで、現行サイトの訪問者への補助的な多言語方法と言えるでしょう。
各国向け、または各言語向けのページやWebサイトを個別に制作する方法です。
<メリット>
<デメリット>
更新頻度が低く、Webサイトのページ数が限られている場合や、検索エンジンの上位ページを目指す流入窓口になるランディングページなどにおすすめです。
昨今では、既存のWebサイトを簡単に多言語対応できるサービスが提供されています。それらは「Webサイトの多言語化ツール」や「Webサイト翻訳ツール」などと呼ばれます。
また、既存のWebサイトを構築しているCMSに、多言語に対応させるための機能やアプリが用意されている場合もあります。そのようなツールを利用する方法です。
<メリット>
<デメリット>
言語ごとのページを制作するよりは自由度は無くなる場合はありますが、時間や金銭的なコストを抑えることができるでしょう。
編集機能や検索エンジンに対応させる機能を持っているツールもありますので、どのようなサービスがあるか確認してみましょう。
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多言語コンテンツの作成に関しては、大別すると国、地域別のターゲットや言語別のターゲットに向けて、個別に作成する方法と、特定の言語で作成したコンテンツを翻訳して展開する方法があります。それぞれの特徴やポイントをご紹介します。
国によって文化や風習も異なれば、表現方法やニーズも異なりますので、それらを考慮したコンテンツを作成することが理想です。
企業が見せたいものだけにこだわらず、各国ごとのユーザーが求める情報を展開するよう心掛けてください。
コンテンツを決定する際は、現在のWebサイトに日本語以外で訪問しているユーザーの行動や、検索ワードを調べてニーズを確認するとよいでしょう。また、ターゲットとなる国の法令にも気をつけてください。
地域別や言語別でコンテンツを異なるものにする場合は、サイト制作の手段としては、主に言語ごとのページを制作する方法を選択する必要性が高まります。
ただし、多言語対応ツールには、サイト制作をせずとも各言語のコンテンツを設定する場所を提供してくれるものや、翻訳展開したコンテンツを編集できる機能を持っている場合もありますので、そうしたツールも検討できると良いでしょう。
Webサイトは情報量も更新頻度も高い場合があるため、一つの言語で作成したコンテンツを翻訳し、各言語に展開することも多いでしょう。翻訳については、現在では人力翻訳と機械翻訳の選択肢がありますので、それぞれメリットとデメリットをご紹介します。
<メリット>
<デメリット>
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<メリット>
<デメリット>
人力翻訳と、機械翻訳は両方ともメリットデメリットがあります。
コストや更新運用を重視するページには機械翻訳を利用し、正確さやニュアンスが大切な箇所には人力翻訳を利用するなど、組み合わせて対応することも検討の一つです。
ここでは、多言語サイトを制作する際に気を付けておきたいポイントを解説します。
多言語サイトは、公開して終わりではありません。更新対応に加えて、多言語ユーザーへの対応も必要となる場合もあるでしょう。以下のような公開後の運用についても想定し、用意しておきましょう。
通常Webサイトは継続的に更新を行うため、多言語サイトの場合はそれぞれの言語のページも更新が必要です。
Webサイトを多言語で展開する際には、多言語のユーザーに利用されることも想定し、問い合わせや注文に対してどのように対応するかも検討しておきましょう。
多言語での電話応対、メールやチャットの対応が難しい場合は、そのことをWebサイト上にも明記したり、Q&Aページを整備するなども方法の一つです。
海外への販売には決済対応、国や地域の法律、規制への対応、配送手段の確保、税関手続きなどが発生します。
越境ECの対応方法は、自社で全てを行う以外にも、海外のECモールに出店する方法や、代行販売型、購入代行型の越境EC支援サービスを利用するなどの選択肢があります。
SEOとはSearch Engine Optimizationの略称で、「検索エンジン最適化」と訳されます。検索エンジン向けにWebサイトを最適化し、検索結果の上位表示を目指す取り組みです。
国内向けサイトと同じく多言語サイトでもSEOは重要ですが、国によって使用されている検索エンジンや検索ワード、さらにはインターネット環境の事情が異なります。
加えて、サーバーの物理的な距離によるサイトの表示スピードへの影響や、言語ごとのページをどのようなURLで表示するか、各国の検索エンジンに適した言語のページが正しく登録されるためのポイントなど、多言語サイトならではの「海外SEO」についても確認しておきましょう。
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多言語への対応方法にもよりますが、URL構造についても検討が必要な場合もあります。
URLの構造には主に以下の4つのタイプがあります。
検討する際には、SEOの観点と取得や管理のしやすさの二つの観点が必要です。
国別ドメイン(ccTLD)(例:https://www.◯◯◯.jp)
サブドメイン(例:https://en.◯◯◯.com)
サブディレクトリ(例:https://www.◯◯◯.com/en/)
管理のしやすさの観点では、サブディレクトリが手軽ですが、SEOに関わる個別の調整がしにくいなどのデメリットもあります。
また、SEOの観点では、国別ドメインが最も明確にターゲット国を示せますが、一つの国しかターゲットにできず、取得や運用コストも高まるといったデメリットもあり、サブドメインは管理面、SEO面でバランスが良い場合もあります。
こちらも目的や多言語対応手段に応じて選定できると良いでしょう。
多言語サイトは、デザインやUIにおいても以下のような点に注意しましょう。
多言語サイトは、ユーザーが自分の使用する言語へと切り替えしやすい設計にしておくことが重要です。切り替えしにくいと、サイトからの離脱を招く原因になります。
切り替えボタンは見つけやすい場所に設置し、各言語ごとの表記にするとよいでしょう。
また、閲覧したユーザーのIPアドレスなどから自動で対象言語のページにリダイレクトする方法は避けましょう。IPアドレスの位置情報は正確でない場合があったり、ユーザーのアクセスした地域と希望する言語が異なる場合があります。検索エンジンに正しく登録されなくなる場合もあるため、SEO上も推奨されていません。
国ごとに文化・習慣や見慣れたWebサイトのデザインが異なるため、Webサイトを閲覧する人が感じる印象にも違いが生じます。
また、言語によって一文における望ましい文字数や改行の位置、文字を読み進める方向も異なります。これらを考慮し、その地域の人にとって見やすいレイアウトにすることが理想です。
ターゲットとなる地域の人々に寄り添ってWebサイトのデザインをローカライズするには、地域の文化や習慣に精通した人に監修してもらいましょう。
名前や住所を入力するフォームを多言語に対応させる場合は注意が必要です。
日本語入力を前提としているフォームには、全角入力やふりがなの入力が必須になっている場合があります。そうしたフォームの場合、日本語以外のユーザーが入力を完了させることができません。
また、姓名や住所表記の順番も国によって異なります。
できるかぎり各国ごと、言語ごとのフォームを用意し、共通のものを利用する場合は、各言語での入力に支障が出ないように注意しましょう。
ここからは、多言語サイトの制作フローをご紹介します。
WebサイトやWebサービスを多言語対応する背景や目的は様々です。
まずは、何を目的にWebサイトを多言語対応するのかを明確にすることから始めましょう。
目的を整理することで、どのような情報を多言語で提供すべきか、それによって、どのような多言語対応手段が適切かが判断しやすくなります。また、どの国のユーザーをターゲットにするのか、どの言語に対応するのかも明らかにしましょう。
こうした事柄を明文化し、社内やプロジェクト内で共有することで、より効果的な多言語対応ができます。
続いてはターゲットや目的に合わせて、どのページを多言語対応するか、または多言語サイトのコンテンツを決めます。
その際、Webサイトは情報量も多く更新頻度が高い場合も多いため、コスト面、運用面を考慮し、上述したような多言語対応の手段と合わせて検討できると良いでしょう。
Webサイトに辿り着く方法は、主にユーザーが直接URLにアクセスする方法と、検索エンジンの検索結果からアクセスする方法があります。
目的やWebサイトの利用シーン、ターゲットの行動予測に基づいて、流入方法についても想定しておきましょう。
もし検索エンジンからの流入を期待するのであれば、海外SEOについても確認しておく必要があります。
流入経路やSEO対応がなければ、せっかく多言語サイトを作成しても、ターゲットに見つけてもらえない可能性があります。
また、そうした流入経路やSEOへの対応次第では、多言語サイトの作成手段も異なってくる場合があります。
上述したように、Webサイトの多言語対応方法にはいくつか手段があります。
どのような方法があるかをチェックし、目的や実情に応じて選定しましょう。この際に、公開後の運用体制や運用イメージを明確にすることも大切です。
継続的に運用するための体制を、あらかじめ整備しておきましょう。
多言語サイトの重要性や制作フロー、制作する際に気を付けたいポイントについて解説しました。
多言語サイトを制作するなら、目的とターゲットを明確にすることから始めましょう。
サイトの公開前から、長期的な運用を視野に入れておくことも重要です。
更新のたびに必要となる翻訳はスピード感と丁寧さを考慮して機械翻訳と人力翻訳を使い分け、質の高い多言語サイトを構築しましょう。
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