コラム
2019年も過去最高の4.5兆円を超えるペース!インバウンド消費額も5年で3倍以上に急増
2018年はインバウンド消費額も過去最高の4兆5,189億円
5年で3倍以上に急増し、2019年はさらに上回るペース
日本政府観光局(JNTO)の調査によると、昨年2018年に日本を訪れた外国人旅行者は過去最高の約3,119万人を記録し、2013年から5年間で3倍以上に急増しました(第1回参照)。
これにともなって、2018年のインバウンド消費額も過去最高の4兆5,189億円となり、こちらも過去5年間で3倍以上に急増しています。2019年も引き続き、旅行者数・消費額ともに前年をさらに上回るペースとなっています。
訪日外国人旅行消費額の推移
出典・参考:国土交通省 観光庁のデータをもとに作成
2013年 1兆5,189億円
2018年 4兆5,189億円
→訪日外国人旅行者数と同じく
5年間で3倍以上に急増
中国が最多の1,5兆円で総額の34%
訪日旅行者数の多い中国・韓国・台湾・香港で67.5%
国籍・地域別に訪日外国人旅行の消費額を見てみると、訪日旅行者数が最も多い中国が1兆5,450億円(構成比34.2%)と最大です。次いで韓国が5,881億円(同13.0%)、台湾が5,817億円(同12.9%)、香港が3,358億円(同7.4%)の順になっています。訪日旅行者数の多い東アジア4ヶ国・地域で全体の67.5%を占めています。
国籍・地域別の訪日外国人旅行消費額と構成比
出典:国土交通省 観光庁【訪日外国人消費動向調査】
2018年(平成30年)の訪日外国人旅行消費額(確報)
~ 速報値(2019年1月16日公表)からの変更点 ~
中国 1兆5,450億円(34.2%)
韓国 5,881億円(13.0%)
台湾 5,817億円(12.9%)
香港 3,358億円( 7.4%)
→訪日旅行者数1~4位の
東アジア4ヶ国・地域で全体の67.5%
円高と個人への関税強化で“爆買い”は落ち着くも、
インバウンドは安定した成長市場へ
消費額の伸び率を見ると、最初のグラフからも読み取れるように、2017年から2018年にかけては、それ以前に比べて鈍化しています。これは一人当たりの消費額がやや減少している影響と考えられます(下記グラフ参照)。
中国・韓国・台湾・香港および全体の一人当たり消費額の推移
出典・参考:国土交通省 観光庁のデータをもとに作成
一人当たりの消費額が減少しているおもな要因としては、円安基調だった為替相場が2015年をピークに円高へと転じていることが挙げられるでしょう(第2回参照)。
とくに消費額が最も多い中国について考えてみると、この円高と政府による個人への関税強化によって、“爆買い”が以前より落ち着いたと言われています。買い物需要が一巡したこと、越境ECが一般化したこと、国内の販売店や商品の信頼性が増したことなども、環境の変化として考えられるでしょう。
また、ビザの発給要件の緩和によって、富裕層ほど潤沢な予算を持たない中間層に海外旅行が一般的になったことも、一人当たりの消費額が減少した要因として考えられます。
一方で、中間層への広がりはインバウンド市場の拡大をもたらすメリットがあります。一人当たり消費額はやや減ったものの、旅行者数が増えているため、全体の消費額は伸びています。
また、中国に限らず韓国・台湾・香港はリピーター率が6割程度と高く、リピーターほど宿泊数・消費額が増えることがわかっています。
こうした市場の多様な広がりを考えると、一人当たりの消費額の鈍化は必ずしも悪いことではなく、市場の多様化と安定につながっていると言えるでしょう。
一人当たり消費額は平均15万3千円
欧米豪とアジアの違い
国籍・地域別の一人当たり消費額をランキングにすると、上位にはオーストラリアやヨーロッパ各国、アメリカ合衆国が並びます。アジア域外の遠方から時間も費用もかけて訪日するため、一度訪れると長期滞在することが多く、宿泊費・飲食費・交通費等の基本的な経費が必要となって、一人当たりの消費額は大きくなる傾向にあります。
アジアでは、富裕層の多い中国が上位に入っています。シンガポールほか、急成長中のベトナムやインドも平均以上となっています。逆に、とくに韓国などは国内旅行と同じような感覚で訪日できるため、短期滞在が多く、一回の旅行での消費額は小さくなる傾向にあります。
国・地域別の一人当たり消費額の比較
出典・参考:国土交通省 観光庁のデータをもとに作成
2019年も旅行者数・消費額ともに過去最高を更新するペース
インバウンドは安定した成長市場へ
中国の経済成長の鈍化や、為替相場が円高に転じる中、中国人による“爆買い”が落ち着き、日韓関係の悪化も重なるなどして、インバウンド需要の後退を懸念する声も聞かれました。たしかに、一人当たりの消費額がやや減少したり、旅行者数や消費額の伸びがやや鈍化したりしています。
その一方で、リピーターによる一人当たり消費額の増加や、とくに中国で富裕層から中間層へと利用者の裾野が拡大することにより、旅行者数・消費額ともに過去最高を更新してきました。2019年はラグビーワールドカップ日本大会というプラス要因も加わり、旅行者数・消費額ともに過去最高を更新するペースで推移しています。
このように、インバウンドは一時的なブームではなく、すでに安定した成長市場になっているのです。これを自らのビジネスチャンスとして活かすには、まずは翻訳・多言語化等によって外国人旅行者をうまく集客し、お客様として取り込んでいくことが重要になってきます。この絶好のビジネスチャンスをつかみ、機会損失を防ぐためにも、インバウンド対応はあらゆる事業者にとって不可欠だと言えるでしょう。
あわせて読みたい関連記事